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2017-11-20

中村天風-生活より生存を大事に考える(2)


 

中村天風-幸福になる条件とは?(1)続き

即物的なものに幸福を求めようとすると、
どうしても行き詰まり、満足することなく、いつまでも喉が渇くかの如く餓えた状態に
陥ってしまうということです。

これは以前に、貝原益軒のときにもお話ししましたがつまり「知足」という、
主観的でありながら絶対的な確固たる自己の価値観が無いことに起因するのです。
この「主観的でありながら絶対的な確固たる自己の価値観」となる指針を持っていない人が、
「人間が出来ていない」のであり、幸福になれない人間だというのです。


「生活」より「生存」を大事に考える


 

生存

では、「出来た人間」になる、つまり天風のいうところの「幸福を創り出す人間」になるにはどうしたらいいのでしょうか。天風は、その根本に対して次のようにいいます。

「生きるという現実には『生存』と『生活』の二つの要素がある。生活よりも根本の命を大事に考えろ!」

人間を生物として考えると、
この言葉はまったくもって至極もっともだと思うのですが、実際の私たちは常日頃から
「どうすれば仕事がうまくいくか」
「どうやったら今より生活が楽になるか」と考えがちです。

これは、天風から言わせると命、寿命といったものが今現在、
まだあるから言えることなのであって、ひとたび「生命の存在」が
脅かされれば、そんなこと言ってられないということなのです。

天風の言葉には、頻繁にこの「生命の存在」という言葉がでてきます。

天風は、普段私たちが行っている人間としての生活は表面的なことであって、
根本には命というものがあって、この「命を正しく使わないこと」に問題があるというのです。

つまり、いついかなるときも人間というものは「死」と隣り合わせにあって、
それを忘れて目の前の、例えば「人よりいい暮らしがしたい」とか「毎日、美味しい物が食べたい」といったような欲望にうつつをぬかすのはバカげたことだといっているのです。

これは「死を記憶せよ」とか「死を忘れるな」と訳されることのある「メメント・モリ」の思想と同じです。

 


死があるからこそ生が輝く


生と死

 

古今東西、詩人や賢人たちも「死」があるからこそ「生」が輝くと語ってきました。

とかく私たちは、今、生きてることを当たり前のように思いますが、
それこそ「人間が出来ていない」人の傲慢な考えであって、
人間が出来ている人は「ああ、今日も一日生きることができ、仕事もできた。感謝せねば」
という心境になるというのです。

では、どうしたら天風の語る「生命の存在」、「命を正しく使う」ことができるのでしょうか。

以下、『中村天風 心を鍛える言葉』(岬龍一郎・著)にある言葉を要約すると、


1、心と体が一丸とされたものが命なのだから、心と体の両方を自然法則に背かない

2、自然法則に背かないというのは、第一に「心」の態度を終始一貫、どんなときでも積極的にする

3、積極的にするとは、簡単に言えば、尊く、強く、正しく、清く、生きること

「おおよそこのことぐらい人生、および生命に対して大事なことはない」

出典:『中村天風 心を鍛える言葉』(岬龍一郎・著)

と、語ります。なかなか簡単なようで難しい言葉ですね。
とくに「自然法則に背かない」というのは、どんなことなのか。天風の言葉を簡単に述べれば、これは地球に生きる生命には、己の力ではどうすることもできない力(事柄、これは災害、病気、事故などなど)が往々にしてあり、本来が人知のおよばないことだらけであり、これに「生かされている」というのです。ただ、そういうとまるでなんでもかんでも「自然法則」に任せればいいといった神頼み的な、他力本願的な発想になるのですが、

そもそも天風という人は

「私は、神や仏の存在を肯定し、ただひたむきに尊び崇めこそするが、神や仏に願いを頼むような愚かなことはしない」「お布施などといった金銭で神が買収されるはずもない」といって、神にすがって自分勝手な願いを口にすることを「自分勝手な人で人間が出来ていない」と論破して「我を救うものは我なり、神を頼らず」と言いきった人物です。だからこそ天風は続けます。

次に「生命の生活」という日常的な生き方が重要になってくる。

1、「心」も「肉体」もその可能率を促進することを本意としているので、その方法として「心」は、使用するときに必ず精神を統一すること

2、「体」は、抵抗や耐久力といった生活に直接必要なものを力強くするために、訓練的に積極化することを怠ってはいけない

 


心身統一法


 以上をまとめて天風哲学では「心身統一法」というのだが、この基本原理を実行すると「心と肉体が期せずして結合統一され、その結果、“生命要素”つまり“生命の力”といったものがぐんぐん増大して、健康はもちろん、運命まできわめて良好に向上するようになる。すると、すこぶる幸福な人生が生まれてきて、われわれは本当に生きがいを感じられる人生を歩むことができる」と、天風哲学は提唱する。ホンマカイナ、と疑うむきもあろうが、とりあえずここでは素直に先生の教えにしたがうことにしよう。

出典:『中村天風 心を鍛える言葉』(岬龍一郎・著)

天風の「心身統一法」をここでは詳しく語れないのが残念ですが、天風は心を鍛えて(修養して)「人間を創れ」といい、そのためにはいつも「積極的な精神」でいることを心掛け、逆にストレスを生み出してしまうような原因を「消極的な言葉は悪魔の言葉」だといって、ことさら積極的に自分自身を戒めながら排除しろといいます。

そして幸福も不幸も最後は、「人生は心ひとつの置きどころ」であると喝破するのです。

 


中村天風-(3)へ続く


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