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2017-11-13

中村天風-幸福になる条件とは?(1)


 


中村天風の唱える幸福になる条件



「どこまでもまず人間を創れ。さすれば幸福は向こうからやって来る」

こう聞いたとき、皆さんはどう感じますか?

もちろん、共感できる方いらっしゃると思いますが、この原稿を書いている筆者などは
この言葉を聞いたとき、

素直に「本当?」「それこそ、不幸を感じたことのない幸福な人
(財力や社会的地位のある人)の意見ではないのかな?」と猜疑の気持ちが沸き起こりました。

長引く不況を経験し後、アベノミクスという経済政策によって株価は連日高値を記録しているにもかかわらず、
多くの庶民には実感が乏しく、働けど働けどわが暮らし楽にならざるの心境から抜け出せない。

渋々、体にムチをうって働きに出かければ、ブラック企業と呼ばれる会社が跋扈しているかと思えば、
大手と呼ばれこれまで日本経済をけん引してきた一流企業でさえもが相次ぎ不正を行う始末。

それでもアチコチで人で不足が叫ばれ、忙しさは増すばかり。

将来に目を向ければ、超高齢社会となって破たん寸前の日本の社会保障。
今の現役世代が高齢者となったとき、果たして年金が支給されるのか。

 


将来への不安


不安
それでは貯金でもしないとと思えど、一向に賃金が上がらぬ給与明細を見てため息をつき、
老後どころか来年の予想もつかない不安に襲われる。
気晴らしにテレビやネットを観てみると、

目を覆いたくなるような信じられない事件が多発……。

少し大げさに表現したかもしれませんが、現在、日本という国家は国内外に諸々の問題を抱えております。


これは紛れもない事実です。お話しがそれますが、今の日本を取り巻く状況は世界中が
「一歩間違えば何か起こる可能性がある」と、可能性は限りなく小さいかもしれませんがゼロだともいえず、
目が離せない状況です。

何か不測の事態が起きれば、それこそ景気、経済などは二の次となって国民生活は破たんしかねない。

これでは「私たちに安息はないのか!」と言いたくもなりますよね。働いても働いても楽にならないのならば
「幸福とはなんだ!」と嘆きたくもなりますよね。
そこで今回のテーマである中村天風という人物ですが、こうした悩みに心を煩わせる私のような凡人に「そんなことでは幸福にはなれないよ」というのです。

(※以下の天風の言葉ば、『中村天風 心を鍛える言葉』岬龍一郎著から私なりに要約しております)

「どうして、もっといいことを考えないのか。感謝の気持ちを持たないのか。ああ、今日も一日、何事もなく仕事ができて(暮せて)ありがたいな」と、

どうして思えないのかと言うと、


「不平不満を並べ立てているのは、人間ができていない証拠。利己的、欲深いだけで、少しも心に信念といったものがない」
「こんなことでは、幸福になろうにも、その条件さえクリアできていない」

と……。

では、どうすれば幸福になるための条件をクリアできるのか、その回答が冒頭でも述べた

「どこまでもまず人間を創れ。さすれば幸福は向こうからやって来る」

という言葉です。

 


幸不幸は人間のなせる業


幸福
天風は、「幸不幸は人間のなせる業」だといい、ならば不幸よりも幸福を創りだず人間になったらいいじゃないかと言うのです。

そんなことが出来たら誰も苦労はしないと思うのですが、
天風はある出会いを引き合いにだします。

あるとき、
アメリカを代表する大富豪のロックフェラーが来日しました。
彼は天風と会うと国籍は違えど人の子ということでしょうか天風に悩みを相談しました。

ロックフェラーの悩みはこうでした。

「どうしたら今の財産をもっと増やせるのか?」

「いつ死ぬかわからないのが怖い……」

これを聞いた天風は後に言います。

「あれだけの大富豪になっても悩みがある。だが、悩みがあるうちは人は幸福だとはいえない」

「ま、これはすべて人間が出来ていない証拠。だから悩むんだろうな~」

あの大富豪ロックフェラーを「人間が出来ていない」と一蹴してしまうのが天風なのです。


ロックフェラーは人間が出来ていない!?


お金
では、大富豪ロックフェラーのどこを「人間が出来ていない」というのでしょうか。

それはロックフェラーをはじめ、多くの現代人の悩みが
「金が欲しい」「地位、名誉が欲しい」「死にたくない」といった目に見え、
他者と比較することでその大小なり、長短を推し量る相対的なものだからなのです。

「金が欲しい」という。
では、いくらあれば足りるのか。

そもそも増えれば増えただけ飽くことなく贅沢をしてもっと欲しがるくせに。

「地位、名誉が欲しい」という。
では、どのポストにまで昇るのか。

そもそも地位や名誉を欲しがってる時点で、他者から畏敬される人間ではない。

「死にたくない」という。
では、どれほど生きたいのか。

そもそも長生きが幸福だとは限らないし、
不平不満を並び立てる人間が長生きしたところで本人もその周囲も不幸なだけだ。

天風が言いたかったことは、こうした即物的なものに幸福を求めようとすると、
どうしても行き詰まり、満足することなく、いつまでも喉が渇くかの如く餓えた状態に
陥ってしまうということです。

これは以前に、貝原益軒のときにもお話ししましたがつまり「知足」という、
主観的でありながら絶対的な確固たる自己の価値観が無いことに起因するのです。

この「主観的でありながら絶対的な確固たる自己の価値観」となる指針を持っていない人が、
「人間が出来ていない」のであり、幸福になれない人間だというのです。

 


中村天風(2)へ続く


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